校長メッセージ

本校舎の保存について

横浜共立学園の本校舎は、1931(昭和6)年10月31日に竣工した、地下1階木造3階建寄棟造り(地下1階部分は石炭貯蔵庫、現在は倉庫)、瓦葺の建造物です。
 1923(大正12)年9月1日の関東大震災により学園の校舎は倒壊し全焼してしまいました。その後建てられた本校舎の設計はウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories 1880.10~1964.5)で、彼は米国に生まれ、1905年に滋賀県立商業学校の英語科教師として来日しました。1908年京都で建築設計監督事務所(後のヴォーリズ建築事務所)を開業し、日本で数多くの西洋建築を手掛けた建築家です。
 本校舎の建築資金の多くは米国のミッション(米国婦人一致外国伝道協会)からの寄付によりますが、当時は世界的経済不況で、なかなか寄付が集まらなかったそうです。しかし匿名の一米国婦人より寄付があり、建築が実現したのです。スチーム暖房式の全館セントラル・ヒーティングを設置し、ダスト・シュートも付いており、中心部分に鉄筋コンクリートの壁を用い、耐震構造の配慮がなされています。
 太平洋戦争中の1941(昭和16)年8月に「金属収令」が公布され、1944年には範囲が拡大され暖房設備一切を供出しなければなりませんでした。同年9月、本校舎と体育館は海軍に接収されました。
 1945(昭和20)年5月29日の横浜大空襲により体育館、第二校舎、第三校舎、教員宿舎などすべてが灰燼に帰しましたが、本校舎のみ奇跡的に焼け残ったのです。
 そして1988(昭和63)年11月に横浜市指定文化財(第1号)に指定されました。

 現在本学園では校舎等再整備計画を進めています。横浜市に「都市計画提案」を提出していますが、現在の規制では南校舎の高さを維持できないため、せめて高さ15メートルまでは緩和していただきたいと望んでいます。
 その再整備計画では、「本校舎を、学園の大切な宝物として保存する」ことを柱にして計画を進めています。
本校舎は卒業生にとって大切な「心の故郷」です。その大切な故郷を失うようなことはあってはならないと考えています。現在本校舎も耐震補強は行っていますが、さらに今後も長く保存できるように、再整備計画に盛り込んでいます。校舎等再整備計画がいつから始められるかは、今のところ未定です。関東平野の直下型震災が起こらないうちに、補強工事を進めたいと考えています。
2014年7月25日

横浜共立学園中学校 高等学校
校長 坂田雅雄

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